義務論理について考える

義務論理(Deontic logic)について考えてみます

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義務論理(Deontic Logic)のいくつかのパラドックスの解消 その2

義務論理(Deontic Logic)のいくつかのパラドックスを解消します。

 

その中でも、結合子「∨」、「∧」にまつわるパラドックスを解消します。

 

正確に言えば、SDL(Standard Deontic Logic)で不合理であるように思われてしまうトートロジーが、トートロジーでなくなるような意味論を展開します。

 

p,q,r, …を、行為を表す命題変数とし、これらと結合子¬(否定)、∧(かつ)、∨(または)によって作られる論理式全体がなすブール束から、{0,1}への写像を考えます(これをJと表すことにします)。

 

この写像Jは、命題論理における真偽値関数の類似物で、値1, 0はそれぞれ「善・悪」を表すと解釈します。

 

ただし、便宜上2値論理を考えるので、やってもやらなくてよい行為の値は1とせざるを得ず、実際には、値1は「悪でない」と解釈すべきです。

 

真偽値関数の場合には、論理式全体がなすブール束から、ブール束{0, 1}への準同型写像であり、命題変数に割り当てられた値から、すべての論理式の値が自動的に定まりますが、ここで、そして今後考えようとしている付値は、必ずしもそうではない点に注意します。

 

各論理式に対する値0, 1の割り当て方はいろいろありますが、次の性質を満たすものとします。

 

1. J(p)=0ならばJ(¬p)=1

2. J(p∨q)=min{J(p),J(q)}

3. 少なくとも一つの論理式の値は1

 

ここで、p, qは論理式を表します。

 

ベン図を使って表すとわかりやすいかと思います。

 

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命題論理と異なり、「排反な」4つの論理式p∧q、p∧¬q、¬p∧q、¬p∧¬qについて、複数の値が1であることに注意します。

 

これは、性質1に由来します。性質1は、悪である行為pに対しては、¬p(をしないこと)は当然悪でないが、悪でない行為pに対しては、¬pはかならずしも悪でないことから要請されます。

 

性質2は、ある論理式の部分論理式がすべて1のときに限りpの値が1であることを意味します。

 

上のベン図の例では、p∧qの値が0であることから、pの値も0になります。

 

そろそろ寝る時間なので、続きは明日にします。

 

次回は、1.~3.の性質を満たすJに対して、様相命題の真偽およびトートロジーの概念がどのように定義されるか、および、このように定義された意味論において、義務論理のパラドックスが解消されることを確かめます。あわせて、SDLパラドックスが生じる原因についても述べます。