読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

義務論理について考える

義務論理(Deontic logic)について考えてみます

ベン図を使って様相論理の意味論を考える話 その2

様相論理の意味論を作るために、前回記事

 

umemura-wataru.hatenablog.com

 では、命題論理の真偽値を、ベン図に書き込んだけれども、ベン図を考えることは本質的ではないので、以降は、ベン図を想像するけれども、記述には持ち出さない。

 

われわれの目標は、命題変数達に対して、真偽値関数のような付値(2値または多値)で、∨、∧、¬に対して適当な性質をみたし、様相論理の意味論に供するようなものを見出すことである。

 

これからの説明では、簡単な記述のために、2つの命題変数p、qだけを考える。

 

真偽値関数が満たす性質としては、前回記事でも確認したように、

  1. p∧q、p∧¬q、p∧¬q、¬p∧¬qのうち一つが1、それ以外は0
  2. p∨qの値はp、qの値の最大値
  3. 2値
があげられる。これらをいじってみよう。
 
まず、条件1. をいじることで、様相論理の体系Dの意味論が得られることを示そう。
 
やってみる
条件1. を緩めて、4つの命題のうちの複数が1であってもよいとします。
 
後々これを義務論理に応用することが想定されています。
 
詳しく言えば、次のような応用を考えています。
 
命題変数が行為を表す場合に、これらに1(善)、0(悪)という値を与えます。善悪を真偽に模すことは自然なように思われますが、実際の行為はしてもしなくてもよい行為が大半なので、1という値は「悪でない」と解釈したほうがよさそうです。
 
また、細かく述べれば、善行pと悪行qに対して、「p∨qの善悪はどうなるのか?」という疑問が生じ、「不定」のような値を考えて、多値を導入したほうがよいと思う人もいるかもしれませんが、さしあたっては、自然言語が念頭においている論理(言い換えれば、脳にプリインストールされている論理)を完全に再現するという究極の目標よりは、実用のために、付置の導入によってDあるいはSDLに相当する意味論を作ることを目標にします。
 
ただし、後々においては、義務論理の「パラドックス」を回避するために、便宜的においている仮定を見直したり、多値の導入について論じます。
 
さて、本題に戻って、なぜ義務論理において、1(悪でない)、0(悪)のような論理値を考えたとき、p∧q、p∧¬q、¬p∧q、¬p∧¬qのうちの複数が1である可能性を考慮する余地があるのかについてですが、それは、次のような例があるからです。
 
p:「車の運転をする」、q:「飲酒をする」を考えると、p∧¬q(飲酒せず、運転)も¬p∧q(運転せず飲酒)もやっていい行為なので値は1です。
 
このような理由で、排反な複数の命題(毎回「p∧q、p∧¬q、¬p∧q、¬p∧¬q」と書くのが煩わしいので、以後このように言及する)のうちの複数の値が1である可能性を考慮する必要があります。
 
また、この例では、p、qの値が1ですが、p∧qは(飲酒運転をする)で、当然やってはいけない行為なので値は0になります。
 
このような事態が生じることはこの付値の特徴です。
 
以上から、排反な複数の命題のうちの複数の値が1である可能性を許すことで、善悪と解釈できるような付値による意味論が作れそうな気がします。
 
実際に、これは、様相論理の体系Dに相当するのですが、疲れたので説明は次回にします。