義務論理について考える

義務論理(Deontic logic)について考えてみます

再出発:様相論理の体系Dに対応する様相代数の構成について

発端

真偽値の類似である「善悪値」を用いて義務論理の意味論を構成することを考える。

 

行為を表す論理式全体から、$\{0,1\}$への写像$v$を考え、$v(p)=0$であることを、行為$p$は悪である、と解釈し、$v(p)=1$であることを、行為$p$は悪でない、と解釈する。

 

$\mathrm{OB}$ (~すべき)、$\mathrm{PE}$ (~してよい)を様相結合子とし、行為を表す論理式$p$に対して、$v(p)=1$のとき、$\mathrm{PE}p$が真であると定め、$v(¬p)=0$のとき$\mathrm{OB}p$が真であると定める。

 

次の具体例からわかるように、$v$が満たすべき条件は、$\vee$、$\wedge$、$\neg$を保存する真偽値関数と異なる。

 

$p$:飲酒をする

$q$:車を運転する

とすると、$v(p)=1$かつ$v(q)=1$であるが、$v(p\wedge q)=0$

 

一方において、トートロジーとなるべき論理式がトートロジーとなるためには、$v$は$\vee$を保存することが要求される。 

 

このような付値$v$を導入することによる義務論理の意味論を構想したけれども、勉強(

    1. 束と論理 、 松本和夫著、森北出版

      、1980

    2. 位相と論理、田中俊一著、日本評論社、2000

    3. 記号論理学講義、清水義夫著、東京大学出版会、2013

 による。上の2冊が絶版なのは残念!)

が追いつきつつあり(追いつけていないのは残念)、代数的な意味論の構成について知ったので、nonsenseであるかもしれないけれども、改めて、上述の構成を述べ直す。

 

定式化

論理式により定まるブール代数を$P$とし、$P$から、$P$から作られた様相論理式により定まる様相代数$B$と同型な様相代数$S(P)$を、Stone空間を模して構成する。

 

ただし、簡単のために、様相代数$B$は、$\mathrm{OB}p$と$\mathrm{PE}p$ ($p\in P$)たちを論理結合子によって結合してできる元のみからなるものとし、様相論理式と通常の論理式を混在させない。

 

論理式により定まるブール代数$P$において、$P$から${0, 1}$への準同型写像$v$の余核($v^{-1}(1)$)は、素フィルターであるが、一方、先ほど述べた善悪値関数$v$は、準同型でないので、この場合においては、$v^{-1}(1)$はフィルターでない。

 

$\vee$を保存することから、単にupper set ($x\in v^{-1}(1)$、$x\leqq y$ならば$y\in v^{-1}(1)$である、ということ)である。ただし、素 ($x\vee y\in v^{-1}(1)$ならば$x\in v^{-1}(1)$または$y\in v^{-1}(1)$)であることは同様である。

 

よって、素フィルターの類似物として、素upper setを考え、Stone空間の類似物として、$P$の素upper set全体$S(P)$を考える。

 

このとき、次のような写像$h$によって、$B$は$S(P)$と同型になる(はず)。

 

$h(\mathrm{PE}p)=\{U\in S(P)\mid p\in U\}$

$h(\mathrm{OB}p)=\{U\in S(P)\mid\neg p\not\in U\}$

この対応を、$\vee$、$\wedge$、$\neg$を保つように、自然に$B$全体に延長

 

証明は、次回. 

A Next Step

前回記事と同じ記号を用いる。

 

umemura-wataru.hatenablog.com

 

前回記事の結果に加えて、新たに次の結果を付け加える。

 

*を、付値 f によって真偽が定まる様相演算子とする。ただし、f^~はブール束P^~から{0,1}への単調増加関数とする。このとき

      *(p⇒q)⇒(*p⇒*q)

トートロジーとなるための必要十分条件は、f が

  1. f(p∨q)=1ならばf(p)=1またはf(q)=1
  2. f(p)=1ならば、f(¬p)=0

を満たすことである。

 

前回記事とあわせて, 各演算子を保つ形のトートロジーが成り立つような、付値が満たす条件の特徴づけは一通りできた。

 

微修正と証明を含めて今後すべきことは多いけれども、何よりすべきことは時間の確保だなー。仕事もっていうか、まず仕事頑張らなあかん状況やしなー。明日に備えて早よ寝よ。

A First Step

論理式全体からなる集合をPとし、Pをトートロジーであるという同値関係によって割った商をP^~とする。PからP^~への自然な全射をφで表す。

 

ブール束P^~からブール束{0,1}への写像はφによってPから{0,1}への写像に延長される。このように延長されたPから{0,1}への写像をP上の付値と呼ぶ。

 

fがP上の付値であり、f=(f^~)◦φであるとする。

 

ブール束P^~上の自己同型全体からなる群をGとし、Gの付値fに対する作用を(σf)(・)=*1によって定める。

 

fをP上の付値とするとき、fによって真偽値が定まる様相オペレータ*を導入する。

 

具体的に述べれば、Pの元pに対して、様相論理式*pを考え、*pの真偽値T_f(*p)をT_f(*p)=f(p)で定める。

 

また、様相論理式と∧、∨、¬、⇒によって生成される論理式全体をQで表す。Qから{0,1}への準同型写像になるようにT_fをQ全体に延長する。

 

Qの元qに対して、すべてのGの元σに対してT_{σf}(q)=1が成り立つとき、qは(付値 f あるいは {σf|σ∊G} に関して)トートロジーであるという。

 

このとき、次が成り立つことは、容易に確かめられる。

 

  1. p⇒qがトートロジーであるとき、*p⇒*qがトートロジーであるのは、f が単調増加であるとき、すなわち、ブール束の元としてφ(p)≦φ(q)ならば、f(p)≦f(q)が成り立つとき。
  2. *(p∨q)⇒(*p∨*q)がトートロジーであるのは、f(p_1∨…∨p_n)=max{f(p_1), f(p_2), …, f(p_n)} であるとき
  3. *(p∧q)⇒(*p∧*q)がトートロジーであるのは、f(p_1∧…∧p_n)=min{f(p_1),f(p_2), …, f(p_n)} であるとき

明らかでないのは、*(p⇒q)⇒(*p⇒*q)が成り立つための条件である。

 

これについては、まだ確証が得られていないので、今後の課題とする。

 

MathJaxで書き直すことも課題だなー 

*1:f^~)◦φ)(σ^{-1}(・

トートロジーについて

付値を用いた様相論理の意味論を考える.

 

例えば、事象を表す論理式に対して、その事象が起こる確率を与える付値を考え、具体的には、事象を表す論理式pに対して、その値が1のとき□pが真、その値が0でないとき、♢pが真、と考えたり、あるいは、行為を表す論理式に対して、1と0がそれぞれ善悪を意味するものとし、具体的には、行為を表す論理式pに対して、¬pの値が0のとき、OBpが真、pの値が1であるときPEpが真であると考えたりする、という構想については過去記事において言及済みである。

 

これらの付値は真偽値関数の類似物であるが、これらが満たす性質は真偽値関数のそれとは異なる。特に、真偽値関数の場合は、論理式全体がなすブール束からブール束{0,1}へのブール束としての準同型であるが、新たに考える付値に対しては、このことを仮定しない。

 

特に、pとqの値から、必ずしもp∧qの値が一意的に定まらないので、命題変数の値から、すべての論理式の値が定まらないので、「命題変数の任意の真偽割り当てに対して、pの値が1であるとき、pはトートロジー」というトートロジーの定義に変更を加える必要がある。

 

そこで、改めてトートロジーを定義する。

 

まず、論理式全体からなる集合をPとする。Pの各元に対して、命題論理のトートロジーという同値関係で割った商集合はブール束をなす。正確な言葉使いではなくなってしまうが、重大な影悪影響はないので、前者と後者の区別に頓着しない。(いずれは、可換図式を使うなどして、言い回しを修正する)

 

Pから{0,1}への写像を、P上の付値と呼ぶ。(さしあたっては、二値論理しか考えない)

 

P上の付値vを一つとる。論理式pに対して、♢のような様相オペレーターに対して、v(p)=1であるとき、♢pなどが真であると定める。

 

□のような様相オペレーターに対しては、¬v(¬p)=1であるときに、□pが真であると定める。ここで、外側の¬はブール束{0,1}における演算を表しているので、これは、v(¬p)=0であることを意味する。

 

このようにして、一つのvを定めることにより、様相論理式の真偽が定まる。

 

P上の付値全体からなる集合に対して、ブール束としてのPの自己同型群の作用を考える。

 

つまり付値 f : P→{0, 1}と、σ:P→Pに対して、(σf)(・)=f(σ(・))によって、σfを定義する。(σ^{-1}にすべきかもしれないが、細かい事には頓着しない)

 

fのこの作用による軌道を仮に [f] と記す。

 

さて、トートロジーの定義。

 

様相論理式 p が[f] に関してトートロジーであるとは、任意の [f]の元 g に対して

pが真であることとする。

 

以上の準備をもとに、異なる付値による異なる論理体系の分類の一般論を展開する。

 

もっと成書を読む時間があれば、もっと捗るのになあ。

アイデアのスケッチ

TODOリスト

  1. トートロジーの概念の整理
  2. 1で定めた意味において、K:□(p→q)→(□p→□q)がトートロジーになるような、付値の性質の特徴づけ

 

1.について

 

以前の記事では、トートロジー概念について混乱がある。

 

また、命題(論理式)全体をブール束と考えたけれども、実際には、(命題論理の)トートートロジーという同値関係で割った商がブール束。

 

付値に関しては、可換図式を使って、前者の付値を、後者の付値と同一視する。

 

2.について

 

例えば、命題論理のトートロジーは、準同型になるような任意の付値Tに対して、T(p)=1になるような命題(論理式)のこと。

 

様相を考える際には、真偽値の類似の付値Jを考えて、様相命題に対しては、T(□p)=¬J(¬p)によって、Tの値(真偽値)を定める。

 

様相命題Pがトートロジーであることを、任意のTと任意のJに対して、T(P)=1であることと定義する。

 

ただし、Jについてはある種の性質が課される。

 

この性質の違いにより意味論の分類をすることが目標。

 

□(p→q)→(□p→□q)がトートロジーになるような性質としては、ある種の対称性ともう一性質が必要であるという見当はついている。

 

この検証はいずれする。実例として、義務論理の意味論を展開する。義務論理の意味論については、2種類の意味論(一方は、SDLと同等な奴と、他方はいくつかのパラドックスが解消される奴)をすでに言及済み

 

最後に、□が二重、三重、...である場合については今まで言及していないが,拡張することは困難ではないので、いずれ論じる。 

進捗管理

ナンセンスに終わる可能性もあるけれども、「付値論としての意味論」の構想について覚え書き

 

ここでは、義務論理(Deontic Logic)のみを念頭に置く。

 

方針は次の通り。

 

行為を表す論理式(命題)に対して、真偽値のように、善悪のような値を考える。

 

ただし、この付値は真偽値関数の場合と異なり、論理式全体がなすブール束からブール束{0,1}(後者においても、演算子記号∨、∧、¬を用いる)の準同型であること、命題変数の値から、すべての論理式の値が決まることを要求しない。

 

特に、仮にこの付値をJと表すとき、J(¬p)=¬J(p)がなりたつことを要求しない。

 

これは、してもしなくてもよい行為は、J(p)=J(¬p)=1であると解釈するためである。

 

ただし、J(¬p)≧1-J(p)であることは要求する。これはpが悪事を意味するとき、つまりJ(p)=0であるとき、¬p、つまり悪事をしないことはゆるされるべきだからである。

 

この性質の不等式による表現は不自然に思われるかもしれないが、実際には、∨に対する性質からの帰結

 

このような付値を導入したうえで、真偽値関数をTと表すとき、T(PEp)=J(p)、T(OBp)=¬J(¬p)によって、義務論理的論理式の真偽を定める(PE、OBはそれぞれ、「~してよい」、「~すべき」を意味する様相演算子

 

∨に対する性質の弱め方によっては、義務論理のパラドックスのうちのいくつかを解消できるが、他方において、ブール束の元としてp≧qのときにOB(p)⇒OB(q)がトートロジーになり、OB(p⇒q)⇒(OBp⇒OBq)より強く、OB(p⇒q)⇒OBqがトートロジーになってしまい、これって病的?っていう、一難去ってまた一難的状況

 

 

 

 

義務論理(Deontic Logic)のいくつかのパラドックスの解消 その2

義務論理(Deontic Logic)のいくつかのパラドックスを解消します。

 

その中でも、結合子「∨」、「∧」にまつわるパラドックスを解消します。

 

正確に言えば、SDL(Standard Deontic Logic)で不合理であるように思われてしまうトートロジーが、トートロジーでなくなるような意味論を展開します。

 

p,q,r, …を、行為を表す命題変数とし、これらと結合子¬(否定)、∧(かつ)、∨(または)によって作られる論理式全体がなすブール束から、{0,1}への写像を考えます(これをJと表すことにします)。

 

この写像Jは、命題論理における真偽値関数の類似物で、値1, 0はそれぞれ「善・悪」を表すと解釈します。

 

ただし、便宜上2値論理を考えるので、やってもやらなくてよい行為の値は1とせざるを得ず、実際には、値1は「悪でない」と解釈すべきです。

 

真偽値関数の場合には、論理式全体がなすブール束から、ブール束{0, 1}への準同型写像であり、命題変数に割り当てられた値から、すべての論理式の値が自動的に定まりますが、ここで、そして今後考えようとしている付値は、必ずしもそうではない点に注意します。

 

各論理式に対する値0, 1の割り当て方はいろいろありますが、次の性質を満たすものとします。

 

1. J(p)=0ならばJ(¬p)=1

2. J(p∨q)=min{J(p),J(q)}

3. 少なくとも一つの論理式の値は1

 

ここで、p, qは論理式を表します。

 

ベン図を使って表すとわかりやすいかと思います。

 

f:id:umemura_wataru:20170529010401p:plain

命題論理と異なり、「排反な」4つの論理式p∧q、p∧¬q、¬p∧q、¬p∧¬qについて、複数の値が1であることに注意します。

 

これは、性質1に由来します。性質1は、悪である行為pに対しては、¬p(をしないこと)は当然悪でないが、悪でない行為pに対しては、¬pはかならずしも悪でないことから要請されます。

 

性質2は、ある論理式の部分論理式がすべて1のときに限りpの値が1であることを意味します。

 

上のベン図の例では、p∧qの値が0であることから、pの値も0になります。

 

そろそろ寝る時間なので、続きは明日にします。

 

次回は、1.~3.の性質を満たすJに対して、様相命題の真偽およびトートロジーの概念がどのように定義されるか、および、このように定義された意味論において、義務論理のパラドックスが解消されることを確かめます。あわせて、SDLパラドックスが生じる原因についても述べます。